何もない毎秒

粛々とやり過ごして過ごす日々に嫌気がさして

ナポリタンスパゲティ

  新橋のポンヌフや神保町のさぼうるなど、私にとってナポリタンスパゲティは洋食屋や喫茶店での出会いから始まった。オレンジ色の麺がどっさりと盛られ、緑のピーマン、オレンジのにんじん、白い玉ねぎの細切りが踊るように麺にまとう。お店によっては、まあるい白と黄色の目玉焼きや赤いソースのハンバーグなど、こころ踊るトッピングも。口に入れるとケチャップの酸味とラードの甘みで、なんとも罪悪感のある美味しさだ。ビジュアルも味も、私の気持ちを2段階くらい上げてくれる。ナポリタンスパゲティにかかわらず、洋食の人の気持ちを上げる力はすごい。黄色い卵に赤いケチャップのオムライス、元気なフォルムでぷりぷり食感のエビフライ、添え物だって真っ赤なプチトマトや黄色いコーンに緑のブロッコリーなど、日本人の大好きな奥ゆかしさに迎合しない騒ぎぶりだ。洋食を目の前にすると、子供にかえったような解放された気分になる。それでいいのだ、とナポリタンスパゲティは私を肯定してくれる。

  私に家族ができたら、誰かが落ち込んでいる時や大変な時にナポリタンスパゲティを作ってあげたい。ナポリタンスパゲティに励まされ、友となり、母の味として持たせてあげられたら、それは1つ、私の人生が誰かの役に立つ時だろう。そんなことを考えながら、今日も一人で自分で作ったナポリタンスパゲティを食べる。今日も美味しかったです、ごちそうさまでした。